人手不足の解消を目指して、外国人エンジニアの採用を検討する企業も少なくありません。しかし、具体的な採用手順や入社後の手続きなどが分からず、「いつまでも採用を始められない」と悩む企業も多いでしょう。
そこでこの記事では、外国人エンジニアを雇用するメリット・デメリットを踏まえながら、具体的な採用方法を解説します。人手不足やグローバル化にいち早く対応できるよう、ぜひ参考にしてください。
外国人エンジニアを採用する企業が増加している背景
厚生労働省が発表したデータによると、情報通信産業で働く外国人労働者は75,954人となりました。2012年には26,427人だったことから、日本で働く外国人エンジニアはこの10年で3倍程度に増えたことが分かります。
情報通信産業で働く外国人労働者の推移

厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況表一覧」[別表4]5ページ
出入国在留管理庁のデータを見ても、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人は、2022年6月時点で30万45人(前年比+9.2%増)と増加傾向です。
参照:出入国在留管理庁「令和4年6月末現在における在留外国人数について」在留資格別
このように日本国内で働く外国人エンジニアが増加している背景には、以下の2点があります。
- 国内エンジニアは2030年に最大80万人不足
- 海外進出を目指す企業の増加
国内エンジニアは2030年に最大80万人不足
外国人エンジニアを採用する企業が増加している背景には、国内エンジニアが減少していることが第一に挙げられます。経済産業省の調査によると、2020年時点でIT人材の不足は20万人であり、2030年には最大80万人にまで拡大する見通しです。
IT人材の供給動向の予測

※参照:経済産業省「参考資料(IT人材育成の状況等について)」IT人材需要の変化①6ページ
このようにIT人材が不足している原因は、少子高齢化の進行によって国内の労働人口が減少している点にあります。今後も進むと予測されている少子高齢化にともない、外国人エンジニアを採用する企業も増えていくでしょう。
海外進出を目指す企業の増加
海外進出の観点から、グローバル人材として外国人エンジニアを採用する企業も増加しています。
少子高齢化による人口減少により国内市場は縮小傾向にあるため、成長が続く海外市場にビジネスチャンスを求める企業は少なくありません。実際、外国人エンジニアを採用すれば以下のようなメリットが期待でき、海外進出のきっかけになります。
- 海外文化の知見が社内に浸透する
- 国内事情や慣習などを踏まえたマーケティング戦略を立案できる
- 外国人エンジニアが橋渡し役となり、自社サービスや支社を展開しやすくなる
自社のグローバル戦略を成功させるために、外国人エンジニアを採用する企業も増えているのです。
特にベトナム人ITエンジニアの需要が高い
日本で働く外国人エンジニアの中でも、特にベトナム人は需要が高い傾向にあります。外国人労働者を国籍別で見ると、ベトナム人は462,384人と最多です。その比率は25.4%であり、外国人労働者の4人に1人を占めている状況になっています。
国籍別外国人労働者の割合

※参照:厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)」国籍別・在留資格別の外国人労働者の状況4ページ
企業がベトナム人ITエンジニアを採用するメリットは、主に以下の3つです。
- 非常に真面目で勤勉である
- 若い人材を確保しやすい
- 優秀なITエンジニアが多い
実際、ベトナムの平均年齢は31歳と若く(※1)、政府もIT教育に力を入れています。即戦力になる、かつ長期的に活躍する可能性が高い点が、ベトナム人エンジニアの需要が増加している要因といえるでしょう。
※1:日本は48.6歳
外国人エンジニアを採用するメリット

外国人エンジニアを採用するメリットは、以下の2つです。
- 外国人エンジニアは意欲・実力ともに高い傾向がある
- 柔軟なアイデアが創出されやすくなる
外国人エンジニアは意欲・実力ともに高い傾向がある
外国人エンジニアを採用する1つ目のメリットは、意欲が高く実力もあわせ持っている分、即戦力として活躍してくれる点です。外国人エンジニアは終業後に勉強してスキルアップに励むだけでなく、休日にITイベントへ参加して最新情報を収集する方も少なくありません。
意欲の高さが良く分かるのが、経済産業省の「未来人材ビジョン」で示されたデータです。「社外学習・自己啓発を行っていない人」の割合は日本人で46%だったのに対し、外国人エンジニアとして需要が高いベトナム人はわずか2%でした。
社外学習・自己啓発を行っていない人の割合

※参照:経済産業省「未来人材ビジョン」企業は人に投資せず、個人も学ばない。41ページ
このように成長意欲が強い外国人エンジニアが入社すると、周囲の従業員も良い刺激を受け、自己研さんに励む職場風土が構築される可能性があります。外国人エンジニアの採用は即戦力になるのはもちろん、社内全体のスキルアップにも好影響を与えるといえるでしょう。
柔軟なアイデアが創出されやすくなる
柔軟なアイデアが創出されやすくなるのも、外国人エンジニアを採用するメリットの1つです。
外国人エンジニアは日本人と異なる文化や価値観のもとで育ち、物事を考える視点が異なります。その分、日本人だけのチームでは浮かばなかったアイデアを生み出し、時には思わぬビジネスチャンスを創出することも少なくありません。
外国人エンジニアはイノベーションの風を吹き込む人材として、IT企業をはじめとした日本企業の成長において重要なキーマンとなっていくでしょう。
外国人エンジニアを採用する際のデメリット

外国人エンジニアを採用するデメリットや注意点は、以下の3つです。
- 在留資格を確認する必要がある
- 言語や文化による価値観の違いに注意する必要がある
- スキルに見合った給料を設定する必要がある
在留資格を確認する必要がある
外国人エンジニアを採用する際には、在留資格の確認が必須になります。在留資格で認められた範囲外の業務に外国人エンジニアを従事させると、不法就労として罰則が下る可能性があるためです。
すでに日本国内に在留している外国人エンジニアであれば、当人の居住地を管轄する地方出入国在留管理官署へ就労資格証明書を交付申請すると、採用予定の職種へ従事できるかを確認できます。
※参照:出入国在留管理庁「就労資格の在留諸申請に関連してお問い合わせの多い事項について(Q&A)」外国人を雇用するに当たっての全般的事項Q3
海外に居住する外国人エンジニアを呼び寄せる場合は、採用側の企業が代理人として在留資格認定証明書の交付申請を進めることが必要です。
上記のような手続きは、外国人エンジニアの採用に特化した人材紹介サービスでサポートしてくれます。しかし、サポートにかかる金銭的・時間的コストを考えると、在留資格の取得や申請を進めるシステムは自社内で構築できているに越したことはありません。
なお、外国人エンジニアの雇用には、労務管理体制の構築も必要です。特に、外国人人材を常時10名以上雇用する場合には「雇用労務責任者」の選任が必須となり、管理工数が増える可能性があります。
※参照:厚生労働省「外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針」第5 外国人労働者の雇用労務責任者の選任等
外国人エンジニアを採用する上では、在留資格や就労ビザの手続きは注意して行うようにしましょう。
言語や文化による価値観の違いに注意する必要がある
言語や文化による価値観の違いは柔軟なアイデアが創出されやすくなりますが、同時にコミュニケーションの際に注意すべき点でもあります。
例えば、日本語の細かいニュアンスなどが外国人エンジニアへ伝わらなかった結果、意図した内容とは異なるシステムを開発してしまうケースも少なくありません。外国人エンジニアを即戦力としたい場合は、「日本語能力検定(JLPT)」のN3以上を保有する方が望ましいでしょう。
また、日本語での意思疎通は問題ないとしても価値観の違いから意見が対立し、コミュニケーション上の摩擦を生む可能性もあります。文化的なギャップを埋めるには社内で懇親会を開いたり、管理職に異文化研修を受講させたりするのもおすすめです。
なお、外国人採用に特化した転職エージェントである「Bluee(ブルー)」は、登録者の89%がN3以上です。実務レベルの日本語能力がある外国人エンジニアをお探しの方は、ぜひご利用ください。
スキルに見合った給料を設定する必要がある
優秀な外国人エンジニアを雇うためには、スキルに見合った給料を設定する必要があります。外国人エンジニアは高いスキルアップ意識が魅力の1つですが、その分、相応の待遇が期待できないとそもそも求人に応募してくれません。
また、外国人エンジニアは1つの会社に勤め続けることに固執しておらず、積極的に転職して給与水準の向上を図る傾向があります。仮に低賃金で採用できたとしても、給料が低いままでは他の企業や他国のグローバル企業に転職してしまう可能性も低くありません。
さらに、2022年には円安が大きく進み、日本円で提示する給料は大きく目減りしました。円安傾向が続けば、給料をより高い金額で設定しないと、外国人エンジニアを採用できない事態の発生も懸念されます。
優秀な外国人エンジニアを安く雇える時代は終わり、今後は日本人の採用と同様に待遇面の改善が必須といえるでしょう。
外国人採用の注意点についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
外国人採用の6つの注意点!外国籍雇用のリスクと確認事項を解説
本記事では、外国人を採用する際の注意点を6つ解説します。外国人人材を雇用したいと思いつつ、煩雑な手続きに苦戦している方に特に役立つでしょう。
外国人エンジニアを採用する方法

外国人エンジニアを採用する代表的な方法は、以下の3つです。
- 外国人エンジニア専門の人材紹介サービスを活用する
- 外国人エンジニア向けの求人サイトに登録する
- 外国人留学生をインターンシップで採用する
外国人エンジニア専門の人材紹介サービスを活用する
外国人専門の人材紹介サービスは、初めて外国人エンジニアを採用する企業に適しています。求人募集から採用後のフォローはもちろん、外国人エンジニアとの交渉も基本的にエージェントが対応してくれるためです。
また、面接前に外国人エンジニアの日本語能力や日本文化への対応力をチェックするサービスも多くあります。サービスによっては在留資格の申請手続きや就労ビザの確認など、外国人を雇用するうえで必要な工程にも対応しています。
専門スキルを持ったスタッフが最初から最後までエスコートしてくれるため、特に採用関連の業務負担を最小限に抑えたい企業におすすめの方法です。
外国人エンジニア向けの求人サイトに登録する
外国人エンジニア向け求人サイトの登録も、有効な方法の1つです。同サイトでは企業が求人を掲載して応募者を募る、あるいは登録している外国人エンジニアを直接スカウトできます。サイトによっては人材紹介サービスと同様に、日本語能力をチェックできるところも少なくありません。
なお、インターネットを活用して求職者と接点を作るという意味では、ビジネス特化型SNS「LinkedIn」の利用もおすすめです。同SNSのリクルーターアカウントを取得すれば、求人票を掲載できるうえ、検索で見つけたユーザーへスカウトメールを送れます。
外国人エンジニアを効率的に見つけたい企業は、求人サイトやSNSを有効活用していきましょう。
外国人留学生をインターンシップで採用する
外国人留学生をインターンシップ生として採用し、研究・教育後に本採用する方法もおすすめです。インターンシップ中は以下のような事項を直接伝える機会を確保できる分、企業理解が早期に深まり、本採用後の定着率向上が期待できるためです。
- ビジョン
- 業務内容
- 社内文化 など
ただし、インターンシップ中は下記によって在留資格の種類や必要な手続きが変わります。
- 報酬の有無
- 滞在期間
- 国内大学の在籍状況 など
例えば「留学」「特定活動(継続就職活動)」または「特定活動(就職内定者)」のいずれかで在留している場合には、施設外活動許可の申請が必要です。
※参照:出入国管理庁「インターンシップをご希望のみなさまへ」
インターンシップに関する在留資格
現在の状況 | 報酬 | 従事する 時間・期間 |
必要な手続き・在留資格 |
---|---|---|---|
在留資格「留学」又は「特定活動(継続就職活動・就職内定者)」をもって本邦に在留中 | あり | 1週につき 28時間以内 |
資格外活動許可(包括許可) 対象者・提出書類等についてはこちら |
1週につき 28時間超 |
資格外活動許可(個別許可) 対象者・提出書類等についてはこちら |
||
なし | – | 資格外活動許可を受けることなく活動可能 | |
海外の大学に在籍中 | あり | 1年を 超えない期間 |
特定活動(告示9号) 対象者・提出書類等についてはこちら ガイドラインについてはこちら |
なし | 90日以上 | 文化活動 対象者・提出書類等についてはこちら |
|
90日以内 | 短期滞在 ※詳細は外務省・在外公館にお問い合わせください |
※参照:出入国在留管理庁「インターンシップに関する在留資格等」
外国人留学生のインターンシップを受け入れる際は、採用・本採用後ともに必要な手続きをあらかじめ把握しておきましょう。
外国人エンジニアの新卒採用と中途採用の違い

外国人エンジニアの新卒採用と中途採用の違いは、下表の通りです。
新卒採用と中途採用の違い
新卒採用 | 中途採用 | |
---|---|---|
採用までの期間 | 1年半~2年 | 1ヶ月~4ヶ月 |
日本語力 | 初級~中級 | 初級~上級 |
年齢 | 20代前半 | 20代前半~30代前半 |
スキルレベル | 未知数の部分が大きい | 経験者が多い |
中途採用はビザの手続きが完了すればすぐに来日できますが、新卒採用の場合は大学卒業まで1年半~2年程度の時間がかかってしまいます。また、実務経験がない新卒の外国人エンジニアは技術力の面で未知数の部分が大きいため、即戦力を期待するなら経験者が多い中途採用がおすすめです。
どちらにでも対応できるよう、ここからは外国人エンジニアの新卒採用プロセスと中途採用プロセスの違いを解説します。
外国人エンジニアの新卒採用プロセス
外国人エンジニアを新卒採用する際のプロセスは、大きく分けると以下の3ステップです。
- 外国人学生が就職活動を始める時期の把握
- 選考会(現地またはオンライン)の実施と内定通知
- 来日・入社
一般的に、ビザの取得や研修・受け入れ体制の構築などを考慮して、卒業から1年半~2年前に内定を出せるようにスケジューリングします。例えば、日本で最も就労割合が多いベトナム人学生の卒業時期は6~8月であり、遅くとも1年半前となる12月~翌年2月には採用活動を始めることが必要です。
また、選考会は以下のような流れで進めます。
- 1日目 会社説明会
- 2日目 面接会
- 3日目 最終面接
- 4日目 内定通知
面接時には、プログラミングテストなどの実施も可能です。テスト内容は自社で用意する、あるいはIT関連職種の適性テスト「Web-CAB」を活用するといった方法があります。
内定承諾後は在留資格の取得や住居の用意など、学生・企業双方が就労に必要な手続きを進めましょう。
外国人エンジニアの中途採用プロセス
外国人エンジニアを中途採用する際のプロセスは、大きく分けると以下の5ステップです。
- 外国人採用サービスなどへ登録
- 書類選考
- 面接やプログラミングテストの実施
- 内定の通知
- 来日・入社
書類選考では、在留資格の有無や種類の確認が必要になります。就労が認められた在留資格(就労ビザ)を持っていないと、原則日本の仕事に就けないためです。
すでに在留資格を持っている外国人エンジニアであれば、求人を募集した業務に就けるか、また在留期限が切れていないかなどを確認します。在留資格で認められた範囲外の業務に従事する場合は、変更手続きが必要です。
また、在留資格が未取得であれば、内定後に採用側が代理人として在留資格認定証明書の交付申請を進めます。
その後は外国人エンジニアの受け入れに向けて、マニュアルをはじめとした資料の整備や上司・同僚へのオリエンテーションを進めましょう。
まとめ
外国人エンジニアの採用は転職エージェント「Bluee(ブルー)」の専門サポートで実現

外国人エンジニアは人手不足解決のためという安易な理由だけではなく、社内にイノベーションの風をもたらすグローバル人材として採用する動きが強まっています。
「外国人専門の転職エージェントBluee(ブルー)」は、製造業やIT業界のものづくりエンジニアに特化したサービスであり、即戦力になる外国人人材が多数登録中です。外国人エンジニアの採用から雇用後の対応まで一貫してサポートしており、入社3ヶ月後の定着率は90%を達成しています。
「外国人人材の採用経験がないため、何から始めたら良いか分からない」「言語の問題やスキルが心配」といったお悩みを持つ方は、「Bluee(ブルー) 」へぜひ一度ご相談ください。