近年、さまざまな分野で人材不足が深刻化しているため、人材確保に悩む企業の経営者や採用担当者は多いでしょう。人材確保の方法として、正社員採用やパート・アルバイトの雇用などが挙げられますが、「特定技能」の在留資格を持つ外国人を受け入れる方法もあります。
「特定技能」は、人材不足が問題になっている分野において、即戦力となる外国人の就業を認める在留資格です。
この記事では、「特定技能」の在留資格とはなにか、特定技能で就業できる分野、特定技能の外国人を受け入れる流れなどを解説します。
※記載内容は2024年1月現在のものです。
特定技能とは
特定分野における人手不足の深刻化を受け、2018年の入管法改正により2019年4月から在留資格「特定技能」が創設され、即戦力となる外国人材の受け入れが開始されました。
特定技能は1号と2号に分けられており、受け入れ可能な特定分野は12分野(14業種)があります。
特定技能と技能実習の違い
在留資格「特定技能」と混同されやすい言葉として「技能実習」があります。しかし、特定技能と技能実習は異なるものです。
特定技能と技能実習の違いを下表にまとめました。
特定技能 | 技能実習 | |
---|---|---|
目的 | 日本での人材不足を補うこと | 日本の技術を学んでもらい外国人の母国に技術を広めてもらうこと |
受け入れ人数の制限 | 原則受け入れ人数に制限はない | 企業の規模などにより制限がある |
職種 | 12分野 | 88職種 |
作業の内容 | 単純労働が可能 | 単純労働は不可 |
試験の合格可否 | 特定技能1号は特定技能評価試験と日本語能力検定の合格が条件 特定技能2号は不要 |
原則試験の必要はない |
技能の水準 | 一定の技能・知識が必要 | 技能・知識は必要ない |
在留期間 | 特定技能1号は通算で5年 特定技能2号は更新制であり上限なし |
1号は1年以内 2号は2年以内 3号は最長5年 |
転職の可否 | 可能 | 不可 |
家族の帯同 | 特定技能2号のみ要件を満たせば可能 | 不可 |
参照:在留資格「特定技能」とは|公益財団法人 国際人材協力機構
特定技能と技能実習では、設立された目的が異なります。
特定技能の目的は、人材不足を補うため、即戦力として外国人に就労してもらうことです。一方で技能実習の目的は、技術を修得してもらい母国に貢献することです。
そのため特定技能の場合は、即戦力になり得るかの判断基準となる「技能試験」と「日本語試験」に合格している必要があります。
また、作業内容として専門的な技術が要求されない単純労働が含まれる点も、技能実習と異なる点です。
特定技能の資格の種類
在留期間「特定技能」は、以下の2種類です。
- 特定技能1号
- 特定技能2号
特定技能1号と特定技能2号の大まかな違いは、次の表のとおりです。
概要 | 在留期間 | |
---|---|---|
特定技能1号 | 相当な知識や経験を必要とする分野 | 最大5年 |
特定技能2号 | 熟練した技能が必要な分野 | 上限なし |
ここからは特定技能1号と2号の詳細な内容を解説します。
特定技能1号
特定技能1号は、相当な知識や経験を必要とする分野の業務に従事する外国人に向けた在留資格です。
【特定技能1号】
従事できる分野(12分野) |
|
---|---|
在留期間 | 1年、6か月、4か月ごとの更新制 通算の上限は5年まで |
技能水準 | 試験で確認が必要 |
日本語能力水準 | 試験で確認が必要 |
家族の帯同 | 原則認められない |
受入れ機関又は登録支援機関による支援 | 対象 |
参照:在留資格「特定技能」とは|公益財団法人 国際人材協力機構
特定技能1号の外国人を受け入れ可能な分野は上記の12分野です。企業は、対象になっている分野の職種における特定技能の在留資格を持つ外国人を雇用することができます。農業と漁業の分野においては、派遣での雇用も可能です。
また、特定技能1号には在留期間に5年という上限が設けられている点に注意しましょう。
特定技能1号は、受け入れ機関や登録支援機関による支援が必須となります。登録支援機関とは、特定技能1号の外国人の仕事上・日常生活上の支援を行う機関で、受け入れ機関で対応できないときに委託を受けて支援するところです。
特定技能外国人の支援にあたって、事前ガイダンスを特定技能外国人が理解できる言語で行う必要があります。しかし受け入れ機関で母国語によるガイダンスの実施が難しい場合は、当該言語に対応している登録支援機関に依頼することが可能です。
また、支援計画書などの書類作成のために専門的な知識が必要になるケースもあります。こういった場合でも、受け入れ機関側での対応が難しい場合は、登録支援機関に委託して支援計画書の作成、実施を代わりに行ってもらうことができます。
特定技能2号
特定技能2号は、熟練した技能を必要とする業務に従事する外国人に向けた在留資格です。
【特定技能2号】
従事できる分野(11分野) |
|
---|---|
在留期間 | 3年、1年、6か月ごとの更新制 通算年数に上限はない |
技能水準 | 試験で確認が必要 |
日本語能力水準 | 試験での確認は不要 |
家族の帯同 | 要件を満たせば配偶者や子どもの帯同が可能 |
受入れ機関又は登録支援機関による支援 | 対象外 |
参照:在留資格「特定技能」とは|公益財団法人 国際人材協力機構
特定技能2号では上記の11分野の職種に就くことができます。以前は2分野でしたが、2023年6月からは11分野に拡大されました。これは、特定技能1号の分野から介護を除いた職種です。
また、特定技能2号は特定技能1号からの移行で取得する資格のため、日本語能力の試験は不要とされています。
さらに在留期間に上限がなく、更新している限り在留し仕事を続けられます。長期間の雇用となる可能性が高いため、条件を満たせば配偶者や子どもの帯同も可能です。
特定技能外国人が従事可能な業種
特定技能で従事可能な業種は、次の表のとおりです。
所管 | 業種 | 業種詳細 |
---|---|---|
厚生労働省所管 | 介護 | 身体介護等 |
ビルクリーニング | 建物内部の清掃 | |
経済産業省管轄 | 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業 | 機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理 |
国土交通省所管 | 建設 | 型枠施工、土工、内装仕上げ/表装、左官、屋根ふき、コンクリート圧送、電気通信、トンネル推進工、鉄筋施工、建設機械施工、鉄筋継手 |
造船・舶用工業 | 溶接、仕上げ、塗装、機械加工、鉄工、電気機器組立て | |
自動車整備 | 自動車の日常点検整備、定期点検整備、分解整備 | |
航空 | 空港グランドハンドリング、航空機整備 | |
宿泊 | フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供 | |
農林水産省所管 | 農業 | 耕種農業全般、畜産農業全般 |
漁業 | 漁業、養殖業 | |
飲食料品製造業 | 飲食料品製造業全般 | |
外食業 | 外食業全般 |
参照:在留資格「特定技能」とは|公益財団法人 国際人材協力機構
在留資格「特定技能」で就ける分野は12ありますが、さらにその業務が細かく規定されています。
特定技能の外国人を採用するときには、自社の仕事内容が12の分野に該当しているとしても、詳細な職務内容と合致しているか確認しなければいけません。
特定技能資格の取得方法
特定技能の資格を取得するときには、日本語能力・技能能力を確認する試験を受けて一定以上の能力があることを証明しないといけません。
日本語の能力を確認するための試験は、次のとおりです。
- 日本語能力試験
- 国際交流基金日本語基礎テスト
- 介護日本語評価試験(介護分野のみ)
また、技能を確認するための試験は、分野ごとに用意されています。
たとえば、ビルクリーニングの分野であれば、ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験を受けなければいけません。
ただし、特定技能の試験が免除されるケースもあります。特定技能の試験が免除されるケースは、次のとおりです。
【特定技能資格取得の際に試験が免除されるケース】
- 技能実習2号を良好に修了した外国人
- 特定技能1号から特定技能2号へ移行するとき(日本語試験のみ免除)
参考:特定技能外国人受入れに関する運用要領|出入国在留管理庁
在留資格「特定技能」を取得する際、1号は日本語・技能試験に合格しなければならず、2号は技能試験に合格しなければいけません。ただし技能実習2号を良好に修了した場合、日本語・技能が一定以上の水準として認められます。
また、現状特定技能2号は特定技能1号からの移行でしか取得できません。そのため、特定技能2号の外国人はすでに日本語の能力があることを証明されており、日本語能力試験が免除されます。
特定技能外国人を受け入れるまでの流れ
特定技能を取得するには、まず日本語・技能試験を受けなければいけません。合格後に企業の求人に応募し、採用されたら雇用契約を締結します。
なお、外国人人材の採用方法について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
外国人採用を成功させる方法とは?求人募集から雇用後の手続きまで徹底解説
本記事では外国人採用を成功させる方法として、具体的な募集から入社後の手続きまで徹底解説します。
採用した企業は、雇用契約締結後に次の手続きを行います。
- 受入れ機関等による事前ガイダンス
- 外国人の健康診断
- 登録支援機関と外国人支援の委託契約を締結する(受け入れ機関で支援するときには不要)
また、出入国在留管理庁に提出が必要な書類は、以下のとおりです。
- 在留資格認定証明書交付申請
- 受入れ機関の概要
- 特定技能雇用契約書の写し
- 1号特定技能外国人支援計画
- 日本語能力を証明する資料
- 技能を証明する資料 など
なお、申請は原則、特定技能を取得する外国人本人が行わなければいけません。
海外から来日する外国人を受け入れる場合
在留資格「特定技能」を取得する海外在住の外国人を受け入れる流れは、次のとおりです。
- 外国人本人が日本語・技能試験を受ける(技能実習2号を良好に修了した外国人は除く)
- 外国人本人が企業の求人募集に応募する
- 外国人本人が受け入れ機関と雇用契約を締結する
- 受け入れ機関が特定技能外国人の支援計画を策定する
- 受け入れ機関が在留資格認定証明書を申請する
- 在留資格認定証明書が交付される
- 査証(ビザ)申請し発給される
- 外国人本人が入国し、受け入れ機関で就労開始
在留資格認定証明書の申請は通常、申請者本人が行わなければいけません。
しかし、海外在住の外国人が申請することはできないため、代わりに受け入れ機関が在留資格認定証明書の申請をします。
なお、日本語・技能試験に合格していない外国人と、あらかじめ雇用契約を締結してもよいことになっています。ただし、合格しなければ受け入れができないことには注意しましょう。
日本に在留している外国人を受け入れる場合
在留資格「特定技能」を取得する日本に在留している外国人を受け入れる流れは次のとおりです。
- 外国人本人が日本語・技能試験を受ける(技能実習2号を良好に修了した外国人は除く)
- 外国人本人が企業の求人募集に応募する
- 外国人本人が受け入れ機関と雇用契約を締結する
- 受け入れ機関が特定技能外国人の支援計画を策定する
- 受け入れ機関が在留資格変更許可申請をする
- 在留資格が特定技能1号に変更される
- 外国人本人が受け入れ機関で就労開始
日本に在留している外国人を受け入れる場合は、査証(ビザ)申請し発給する手続きは必要ありません。
まとめ
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在留資格「特定技能」とは、特定の分野における人材不足を補うために即戦力となる外国人の就業を認める資格です。特定技能は1号と2号に分かれており、日本語・技能試験を受ける必要があるか、在留期間に上限があるか、などの違いがあります。
特定技能は人材不足を補うための在留資格であるため、どのような職種でも就業できるわけではありません。特定技能1号は12分野、2号は11分野への就業のみが認められています。特定技能外国人の雇用を検討する際には、就業させられる職種や、資格取得までの流れを把握しておくことが重要です。
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- 87%の登録者が25~35歳の若手層
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